Novel
□愛しい人
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…―君の頬も髪も瞳も鼻も唇も…すべて自分のものにしたくてしょうがない―…
そんな強い独占欲をいつから俺は抱いていたのだろうか
「すまんのう。まったか?」
「いえ。大丈夫です。俺も今きたばっかりですから。」
そう言った日吉の頬や鼻は赤く染まっていた。あきらかに30分くらい前からまっていたことがわかる。
「うそをつきんしゃい。手、すごく冷えてるぜよ?」
「……冬、ですから。」
「くっくっ。可愛い言い訳じゃの。」
俺は日吉の手をにぎる。それに反応し、日吉は赤く染まっていた頬をさらに赤くする。
それが愛しくてしょうがない。
しばらくの間、沈黙が続く。
その沈黙でさえも心地よいと思った―。
最初に口を開いたのは日吉だった。
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