正反対姉妹の華麗なる日常(ブック)
□その姉、サディストにつき
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"ジョウト地方四番目のジムリーダーにしてゴーストタイプの使い手。
エンジュシティ在住にして千里眼を持つ修験者、マツバ。
一番目のジムリーダーハヤトに次ぐ若さでジムリーダーに就任。
そのミステリアスな雰囲気と端整な容姿から女性ファンが多数いる。
人気もさる事ながら強さも引けを取らない。"
『…これからの彼の活躍に期待…。どうしてこういう雑誌って嘘しか書けないのかしらぁ?』
独り言のよう呟かれたその言葉でディアナの下にいる"何か"が若干揺れた。
それを横目に見たあと、ニタリと嫌な笑みを浮かべる彼女の表情はまるで悪魔のようである。
『ミステリアス…。常日頃からエロい妄想ばっかりしてるくせに本当に外面はいいのねぇ?マ・ツ・バ』
「っ…!!」
触れるか触れないかの位置で椅子代わりにされている彼の背中に指を這わせればピクッと小さく体が跳ねる。
それをディアナは酷く面白い道化でも見たかのようにケラケラ笑った。
四つん這いにさせられ、数時間も40キロの重りを背中に乗せられたような状態で不動。
そう、なんと今ディアナが座っているのは話の種であるマツバなのだ。
『ねぇ疲れたぁ?疲れてないわよねぇ?』
「は、はい…!!」
優雅に足を組み直し薔薇のカップで紅茶を啜るディアナとは対照的にマツバは顔を真っ赤にしたまま小さく頷く。
だがいくらディアナが平均体重よりも軽いとはいえ何時間もそのままにしていれば確実に疲れは溜まるのだ。
実際に床についたままの手足はもう痺れ切って感覚は無い上にガクガクと震え始めている。
これでは生まれたての小鹿のようなもの。
とてもじゃないが自ら喜んでやれる物とは思えない苦行である。
ちなみにディアナの名誉の為に言っておくが決してこの行為を彼女が強要したわけではない。
ディアナが一言『椅子が欲しい』と言った瞬間。
マツバが床に摩擦熱で火災が発生するんじゃないかという勢いで滑り込み四つん這いになったかと思えば「どうぞ!!」と雑誌に写っている以上の決め顔で言ったのだ。
ファンが見たら確実に号泣する光景である。
『というか揺れるんだけどぉ、椅子なら座った人間を不愉快にさせないでよねぇ?』
「ご、ごめ…なさ…!」
今まで高かった声が若干低くなった。
ただそれだけなのに心地良く心臓が高鳴り全身の血が沸騰するような感覚を覚える。
《マスター、そいつニヤけてますよ》
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