小説

□月明-ツキアカリ-
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―これは、ある深い森に住んでいる少女の話。


少女には両親はいない。
少女が幼いときに2人とも食料を捕りに森へ行った所、崖から落ちて死んだ。

少女はそのことを知らない。
自分は、最初からずっと一人だと思っていた。

その思いから、少女は感情さえも捨ててしまった。
感情なんか持っていると、何も出来ない。
そう考えたのだ。




少女は人を知らない。

少女の住んでいる場所はとある山の奥深く。
普通の人が住めるような場所ではなかった。
なので、人を見たことはない。

でも、胸にはペンダント。
そのペンダントの中には亡き父と母の姿。

しかし少女には分からない。
これが何なのか。
これが人とは、到底検討がつかない。


でも、これを見ていつもこの感情が頭に過ぎる。


”―寂しい”


感情を捨てたはずの少女。

少女には分からない。
このカンジョウが。

なぜこんなに胸が痛くなるの?
なぜこんなに震えているの?
ナゼ、コンナニ目カラ水ガデルノ?


時は夜。

月の明かりに照らされ、少女は泣く、泣く。
少女には分からないことが多すぎた。
だから全てが怖い。
森の樹も、今にも襲ってきそうで。
風も、自分をあの世へ連れていきそうで。


唯一少女がこの世界で綺麗と思ったものは”月の明かり”。



その日、少女はまた月を見ていた。

月を見てると心が安らぐ。
この変な感情を落ち着かせてくれる。

この時の時間が少女にとっての最高の居場所。
なにも怖いものなんてない。
この月が私を落ち着かせてくれる。


コノ月ガ私ノ両親ダ。
親以外ノ物体ナンテ存在シナイ。


…ソウデショ?オ母サン、オ父サン



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月明-ツキアカリ-2

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