薔薇薔薇世界

□ヘテロ結合体
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「あはは!まじうけるね〜」
「でしょ?超やばいんだって」


先程と変わらぬ音量で騒いでいる女生徒達の声、換気扇の音、時折誰かの咳払い、本のページを捲る音。


そしてもう一つ、こちらに向かって走ってくる足音にも、花音は他の雑音同様に気づくことはなかった。



ピンクベージュのネイルが施された指が棚の一番端まで辿り着いた時、突然視界に現れたのは花音のよく知る人物だった。



「花音様!」


『うわっ!セバスチャン…どしたのこんなとこに』


花音がセバスチャンと呼ぶこの男、栗毛色の髪に青色の瞳を持つクウォーターの青年で、今は花音の専属執事――兼お目付け役なのだが――として働いている。


もちろんセバスチャンとは花音がつけた愛称であって本名は金森総一朗と、その容貌に似つかわしくない荘厳なものであった。

冗談半分で花音がつけたものであったが、何故か今では家中の人間からセバスチャンと呼ばれているのである。


はあはあと息を切らしながらこちらに近づいてくるセバスチャン、その顔は少しながら深刻さを持ち合わせていたために花音もあわてて駆け寄った。



「花音さま…いいですか、よく聞いてください。」

『え?何…そんな深刻なの?』






「花音様を攫いたいと思います!」

『……』

「……」



『……え?何それ……新手のギャグ?』

「っ申し訳ありません!」


そうとだけ言い放つとセバスチャンは、花音の右腕を自身の方へと引き寄せ背後に回ると、白い布で鼻と口を押さえ込んできた。



『ちょっ……〜〜んんっ…!』

ドゴッ!

「うわっ……がはっごほごほっ」

鈍い音を立てて倒れたのは花音では無く、セバスチャンの方だった。


とっさに息を止めた花音は引き寄せられた反動でそのままセバスチャンの腹部目掛けて左ひじを送り込んでやったのだ。



『はぁっ……私を攫うなんて…』


花音は横たわる男からネクタイを剥ぎ取り、その背中を踏みつけうつ伏せにすると両手両足を後ろで縛ってしまった。



『100年早いのよ』


「か…かの…ん…様…」



 
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