薔薇薔薇世界

□獄
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銀色の髪は鋭さと冷たさを持ち、灼眼は反して男の狂熱さを物語っているようだった。


『だっ…だれ…?』



疾走して酷使した喉は知らずの内に渇き、送り出す言葉は自分でも弱々しく思えた。

そんなマリアの状態に、男は少しだけ柔らかな笑みを洩らすと、指の背でマリアの頬を撫でる。




「俺は君の全てさ」



男が発した言葉は脳天を貫き、心臓を締め付けた。


意味の分からないこの言葉に全てを支配されたのだ。
その声音は、確実にマリアを捕らえた。


そして、段々と立つことすら儘ならない彼女を腕に抱きとめた男はこう囁いた。




「君も俺の全てだ」









月に暈が掛かっている――…



そんなことを考えながら、マリアは襲い来る睡魔に勝てることが出来なかった。






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