薔薇薔薇世界
□獄
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鬼が数え初めてから必死に駆け抜けてきたのだから、結構遠くまで来ているに違いない。
加えて休憩所のような美しい場所なのだ、少しだけ休もうとマリアはその空間に足を踏み入れた。
『っはぁ…はぁ』
どくどくと鳴る心臓に合わせて呼吸を繰り返していると、段々と滲み出た汗も引いて行った。
それと同時にマリアは違和感を感じた。
『……』
どれだけ耳を澄ませても誰の声も聞こえないのだ。
いくらマリアが迷路の奥深くまできてしまったからと言っても、鬼の煽る声や少女たちの逃げ惑う声、何もかもが聞こえてこないのだ。
不安になったマリアは、様子を窺おうと広場から出ようとした。
しかし不思議なことが起きたのだ。
目の前に迷路への出入り口は見えているのに、そこに透明なガラスでもあるかのように、いくら手で押しても外へ出られないのだ。
『え?…なにこれ…っ!だれかっ!』
手が触れる度にガラスには波紋が描かれるだけで、一向に外に出られそうな気配もない。
『………うそ…』
「マリア…」
『!?』
マリアが一人呆然と立ち尽くしていると、背後から何者かに声を掛けられた。
びくりと肩を跳ねさせて、後ろを振り返るとそこには一人の男が立っていた。
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