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□よーん
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『記』の下、つまり誓約書通りに言えば
私が願いを聞き入れるらしい人物の箇所に、
折原臨也
と名前が連ねてあった。
どういうことだ説明しろと雰囲気だけで伝えると、
流石に折原さんは分が悪いと思ったのか口元を引きつらせた。
「いやあのね、これ、大分前に書いて貰ったんだけど。
ええと、確か…そう、一昨年くらい。夏に二人で飲みに行ったの、覚えてる?」
「一昨年の夏…?」
ほんとに大分前だな、と思いながら記憶を探る。
…ああ、確かに言われてみれば行った記憶がある。
当時から苦手意識はあったのだが、特に断る理由もなく、
奢ってくれると言ったので首を縦に振ったのだ。
既になんとなく嫌な予感を抱える私。
「あの時ね、最初近くの居酒屋に入って、軽く飲んだんだけど。
その後もう一軒行ってさ」
「…二軒も行きましたっけ」
「覚えてないか」
記憶上では最初の居酒屋でお酒をおかわりしたところで止まっている。
まあその後、朝何故か会社の仮眠室で起きたところしか
記憶がないから、安易に今の話を疑うこともできない。
ひとまず大人しく話を聞くこととして、
多少憮然とした態度で耳を傾ける。
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