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□さーん
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…百歩譲って私のものだったとして。
折原さんが覚えてて私が覚えてないっていうのは何なんだろう。
ていうか、誓約書ってなんだよ。
今更の突っ込みをしつつ、渡された紙をもう一度見直す。
ちなみに折原さんはまだ帰らない。
暇なのか。
彼女くらいいるだろうに、早く帰ってやれよ。
全く関係ないことを思いつつ、内容に集中すると…。
「誓約書。
私は下記の人間の願いを一つ、何でも聞き入れると
約束致します。紗倉えみ……ってなにこれ!?」
思わず名前のところを穴が空くほど見つめてしまう。
穴が空くことはなかったが、代わりに多少汚くとも
それが紛れもなく自分の筆跡なことに気づいた。
ちょっとまって、何なのこれ。
こんなの全く身に覚えがないんだが。
しかし、よく見るとその紙はどうも正規なものではないように思えた。
簡単に言えば、手作り臭がする。
多分Wordでも使って適当に作ったのだろうが…、一体なんなんだ。
それからふと『記』の下に目を移すと――
「…………」
「ああっ、ちょっと!折角なんだから破かないでよ」
「折原さんあんた…!」
慌てたように私から再度紙を奪うが、
私は既にはっきりと見てしまった。
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