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□にーい
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ただ、私はこの人が苦手だ。


というか寧ろ嫌いと言ってもいい。



なのでここは早々に話を切り上げて
お帰り願おうと思ったのだが――




「お疲れ様です」

「何?その封筒」




形式的な文句を半ば無視するかたちで、
折原さんは私の手元を覗き込む。


うわ、興味を持たれた。厄介だな。




「いえ、よく解らないですけど。捨てとくんで大丈夫です」


「ええ、もし大事な書類だったらどうするの?
俺のかもしれないし、ちょっと見せてよ」




確かに折原さんとはデスクが隣なので紛れ込んだのかもしれない。


が、紙の見出しが見出しだ。

下手に突っ込まれたら面倒事になる可能性だってある。



見せるか見せまいか。



私が結論を出す一瞬早く、

折原さんはさっと私の手から紙を引き抜いた。




「あ、ちょっと」




取られてしまった。


これじゃあ私に最初から拒否権はないみたいに思えるじゃないか。




「誓約書…?―ああ、この紙!まだあったんだ」




どうやら折原さんのものだったらしく、嬉しそうに頷いている。


ああ、なら一件落着だな。

これ以上関わらないうちにさっさと話を終わらせよう。




「整頓くらいしてくださいね。
じゃあ私ももう帰るんで」

「え?いやいや、これは紗倉さんのだよ?」


「は?」




意味が分からずに振り返ると、

折原さんは嬉しそうにニコニコと笑って、




「はい。お返しするね」




私の手にやけにしっかりと渡す。







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