中編集
□いーち
1ページ/1ページ
時計はもう10時半を回ろうとしていた。
殆どの人間は帰宅する準備を始め、
オフィス内に挨拶が行き交っている中―
「……なんだこら」
少し整頓してから帰ろうとしていると、見覚えのない封筒を見つけた。
何の変哲もない普通の茶封筒。
まぁ、開けてみっか。
たいした覚悟もなく、ぺりっと封を切る。
「ん……。…せい…やくしょ……。…誓約書?」
「なーに一人でつぶやいてるの、紗倉さん?」
「ふぉっ!?」
いきなり横から声がかかり、奇声を発してしまう。
慌ててそちらを見ると、同僚の折原さんだった。
スーツのネクタイが少し緩んでいる。
カバンも持っていたため、帰宅するのだろうと見当がついた。
「折原さん。お帰りですか」
先ほどの過剰な反応とバランスをとるように、
できるだけ平然と私は言った。
.