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どうやって、ここへ。

どうやって運んできたんだろう。


ていうか、どうして私が屋上にいたこと…。






表情から汲み取ったのか、折原君は簡潔に説明してくれた。






「えみちゃんを待ってたらさ、凄く遅かったから、どうしたのかと思って。
探してたら―屋上で倒れてるの見つけて、運んできたんだよ。

途中で一回、目覚ましたんだけど…覚えてない?」




全く覚えていない。

目を瞬かせると、折原君はクスッと笑った。




「ま、覚えてない方が良いかもねえ。
えみちゃんにとっては、人生最大の恥だろうし?」

「え?ちょ…どういうこと?」



「えみちゃん、弱音吐いてたんだよ。助けて、ってさ。
助けて欲しいのは、その怪我の原因からかな?

…違うよね?」


「――――」






私は痛む体を無理矢理起こし、折原君の腕を掴んだ。


嫌だ。こんなとこで、私は私を崩す訳にいかない。

私は強くなくちゃ、強く、だって今までそうしてきたから、

強いフリを、一生懸命――




「―忘れて。お願い、その事は忘れて!

そんなの私じゃないから、私は助けて欲しくなんかないから、私は一人で平気だから――」







「馬鹿だね」







折原君は真剣な顔をして、私を見据えてきた。


時が止まったように、私は言葉を紡げなくなる。




胸の奥が、きゅう、と締め付けられた。






「えみちゃん、自分が馬鹿なこと、解ってるでしょ?」

「………」

「自分で自分の首絞めてさあ。どうやってこれから生きていくつもりだったのさ」






折原君は、何でも解ってるような目をしていた。





―あ、こら、ダメ…だって…。


―泣いちゃ…泣いちゃ、ダメ…。







「……っ…」


「俺はね」







私の頬に手を当て、涙をふき取りながら、折原君は囁くように言う。








「全部、知ってるよ。えみちゃんが本当は弱い事、寂しがりやな事、理想の自分になろうと努力してる事、
本当の自分との違いに悔しい思いをしてる事、…それでも本当の自分を誰かに愛して欲しい事」

「――ッ」


「改めて、言わせて貰うよ。
俺は、そんなえみちゃんが好きだ」





「全部ひっくるめて、えみちゃんの存在が、何より愛おしい」







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