おまけ

□闇姫
2ページ/4ページ



「誰って…」


問われた湊はくるりとあたりを見渡し、

なんとなく話を聞いていた他の面子と同じ人物に目線を向ける。


皆からの視線を一身に浴びた本人は、いたって当然そうに笑った。


「ま、とーぜんボクだよねー」

「まぁ普通に考えて梁取だよな」


いつも女の子を纏うように歩く梁取の姿は、王宮外でも有名だ。

美瑚もうんうん、と頷いている。


「じゃあ、二番目。次にモテるのは誰?」

「それは…」

「萩野じゃない?」


ぴっ、と支持率ナンバーワンの梁取が、少し離れた所で仕事を片付けている萩野を指差す。

話半分に聞いていたため、突然名前を呼ばれた当の萩野は驚いた様子でこちらを振り返った。

それから少し照れたように言う。


「いえ…、俺なんて全然ですよ」

「なんで、萩野頭いいじゃん。仕事できるし」

「まぁ、上司があまり使えないものですから」

「うっ…」


嫌味を言われたシズが、小さく呻いて顔を本で隠す。

シズもあんなかわいー顔して萩野の上司なんだよな。あいつも割と仕事はできるはずなんだが。

湊が心の中で呟きながら、視線を萩野に戻す。

するとぱっと目があった。


―あ?


「湊じゃないですか?二番目は」


…なんかぶっこまれたぞ!?



「あー」

「湊ねー」


一同、妙に納得した様子でオレを見る。


んだよ、んな訳無いだろ…っ!


頬に熱が集まるのが、自分でも分かる。


あーもう、恥ずいな…!こういうのは苦手なんだよ…っ!


「んな訳ねぇって、萩野だろ、萩野!」

「えーでも、実際湊はモテるよ?」

「梁取手前っ…!根も葉もないこと言うな!」

「そうでもないって。男の評判なんてどーでもいいけど、
女の子がちょくちょく湊の名前出すんだよね」

「は…!?」


ば、馬鹿言えっ!
つうか、これ以上オレを照れさせんな…!!

しかも、曲がりなりにも闇姫の前でよぉっ…!


「曲がりなりにもって何!?私れっきとした闇姫だよ!一応!」

「でもお前記憶失ってんじゃねぇか!」

「それはそうだけどさ!」


美瑚が喚くが、それ以上は無視する。

以前の美桍ならまだしも、美瑚にならもう何しようが問題はない。


「とにかく萩野!二番目にモテるのは萩野な!」


これでこの話は終わりだ。あとはとっとと退散することにしよう。

最初にぼーっとアホ面を晒す闇姫に声をかけてしまったことに後悔しつつ、オレは立ち上がった。


「まぁ、それでいいんじゃないかな。言っても如何せん湊はヘタレ野郎だし」

「うっ…」


シズじゃないが、同じように言葉に詰まる。

それに関しては自覚もあるため、反論できない。


「そうですね。湊は究極のヘタレでした」

「ねー?」

「ん、湊くんは…うん、そうだね」

「あっシズ手前まで!」

「え?湊、ヘタレなの?」


ただ一人、話についていけない美瑚が首をかしげる。

そうだよー、と梁取が自然と美瑚の隣に腰かけた。








.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ