dream

□サンタの僕を
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ぼすん、と音を立てて私はベッドへ倒れ込んだ。
ずっと握り締めていた携帯も放って、ただ真っ暗な天井を眺めた。



『明日、部活終わったら連絡するから』



クリスマスイブだと言うのに私の彼氏は部活だ。
それだけ本気なのはわかるし邪魔をするつもりはない。
だけど、終わったら連絡してくれる という彼の気遣いが、何よりも嬉しかった。


…時刻は夜中の1時。
ずっと信じて待っていたけれど…やはり忘れてしまっているのだろうか。
部活で疲れて寝てしまったのだろうか。


(仕方ない…)


そう心の中で何度も唱えては、ため息が出る。
忙しいのはわかる。応援したい気持もある。


だけど
だったら最初から期待なんかさせないでよ


思いたくも無い事まで思ってしまう。
…さっさと寝てしまおう。


私は布団にくるまって泣きそうになるのを堪えながら眠りについた。







翌日

目を覚ますとまぶしい光が窓から差し込んでいた。もう昼間だろうか…



「おはよう」



すると誰かの声が聴こえた。
ゆっくりと身体を起こし目をこすって見ると、そこには愛しい彼氏がいた。



「わ…かし」

「今何時だと思ってるんだ。もう12時だぞ」



(なっ、なんで)

驚きで声が出ない。
しかし彼には山ほど言いたい事があって、次第にむかむかと腹が立った。



「あんたの所為で寝れなかったのよ!」



そしてやっと声が出たのと同時に、私は枕を若に投げた。



「部活終わったら連絡するって言ってたから…凄い楽しみに待ってたのに…いつ連絡来るかなって…ずっと」

「…ごめん」



怒りで頭がカッとなっていたはずが、次第に涙が溢れた。
何を怒っているのだろう、なんで素直に淋しかったと言えないのだろう。
そんな自分のもどかしさ、そして目の前に彼がいる愛しさ
溢れて、声がやっぱり出なくなって
若は強く私の手をひいて抱きしめた。



「今日、何日だかわかるか?」

「…は?25日……」

「そして何で俺がここにいるかわかるか?」

「…?」

「クリスマスプレゼント、…自分がプレゼントです」



若はゆっくりと私を離して、顔を赤らめながらも目を逸らさず言った。
最初は何の事だかわからなかったが、見つめ続けると若の顔は更に赤くなって耳まで真っ赤だった。



「…連絡しなかったのは悪いと思ってる。その、びっくりさせたくて」



照れた顔で、真っ直ぐこっちを見つめる若が可愛くて思わず笑みがこぼれた。
さっきまでの怒りも悲しみも無かったみたいに、すべて彼が愛しいという感情に変っていく。



「いいの?こんなプレゼント」

「あぁ、こんな奴でよければ」



二人して笑って、また私達は抱きしめあった。


(メリークリスマス!)





**
日吉はさり気なくロマンチストであってほしい。




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