dream
□応急処置
1ページ/1ページ
保健室で赤也の手当てをする。
怪我は、右膝に擦り傷と頬には殴られた痕。口から血が出ている。
「喧嘩でもしたの?」
保健室に入って来た時も、そして今もこうして問いかけたが…黙り込んだまま。
同じクラスでよく喋る方だから…わりと仲良いと思ってたのに。勝手な勘違いでしたか。
「しみたらごめんね」
膝の手当てを終えた後、殴られたであろう顔の手当てを始める。
最初は軽く濡れたタオルでふき取って血や汚れを取る。他人の顔に触れるのは、こういう状況でもちょっと緊張する。
「…ちけぇ」
ぼそりと呟くので上手く聞き取れず、しみたのかな?と思った。
「ごめん、しみた?」
「違う。近いっつってんの」
「…仕方ないじゃない。顔の手当てしてるんだし。我慢して」
「無理」
赤也は強引に私の腕を引っ張り、私は体制を崩して赤也に抱きついてしまった。
すると彼は私の背中に手を回して、ぎゅっと力強く抱きしめた。
「我慢なんて、出来なかった…」
次第に彼の抱きしめる力は弱くなって、小さく震え始めた。
ゆっくりと赤也から離れると、彼の目は涙でいっぱいだった。
「でも、お前の彼氏だから、殴れなかった」
目から一粒二粒…そしてどんどん溢れてく。
そんな赤也の姿を見るのは初めてで、胸が締め付けられる。
「お前の悪口言ってたんだ。悔しくて…文句言ったら、ちょっと取っ組み合いになって……でも…もし俺がここで殴ったら、お前が泣くのかなって、思って…」
だからってあたしは赤也に泣いてほしいわけじゃない
「バカ也…そんなの気にしなくていいのに」
「………好きな女の悪口言われたら、悔しいに決まってんだろ」
私も赤也と同じ、涙が溢れて止まらなかった。
知っていた。彼氏に嫌われていた事。
だけど何も出来なかった…別れよう、って切り出すことすら。
私は彼が大好きだから…そんな事気にならないくらい彼が愛しかったから。離れたくなかったから。
でもそれは……本当は、間違っていたのかな…?
「あたし、…殴ってくる」
「は?」
「赤也が殴られた分、殴り返しに」
「ばっ、ばか、 「そしたら…!……傷の手当て、してね」
涙を拭いて、強く奥歯を噛み締めて、笑ってみせた。
赤也はそれ以上何も言わなくて、だけど笑ってこう聴いた。
「心の手当てもいるか?」
「…どうぞ、ご自由に」
じゃあ待ってる、と言って手を振ってくれた。
私は静かに微笑して保健室を出て行った。
**
どうしても赤也は怪我してるというイメージ(笑)