薙史の「し」

□錆
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廃棄場から音が生まれてくる
キンキン カンカン
誰も見つけない
忘れられた思い出達が鳴く
一つ城が出来またもう一つ
ガンガン ドンドン
誰も住みはしない
貪欲に吸い上げられた屑の城

赤い空の下から
何も見つめられずに
気が付けば
錆が彩って
やがて何も見えなくなる

生まれた時
僕らはきっと何者でも無かった筈なのに
気が付けば
奪われて 植え付けられた
エゴと奢りの錆

期待はいつでも
他人任せで
ランラン ドンドンドン
軋む針の音は
蝕む錆に時を告げる

望む声は遠く
裏切りの声は近い

誰も居ない
部屋の中 独り音を立てず
窓辺にもたれる
空になった
ボトルから 一滴の雫を
喉に運ぶ

大勢が有意義なのは
錆びる事を恐れてるから
独りの時間に飲まれ
雫が躯を錆びさせる

きっと誰にも触れられない
消えていく ただ キエテイク
声は誰にも届かずに
こだまして
空を響かせる

埋もれていく
屑の中 小さな花が何かを伝えようと
枯れて消える
運命でも 儚くて愚かだとしても

消えたくない
そう告げる 光をもう少し見つめたくて

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