‡†ダブルローズ†‡

□第七章
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今、彼はどちらの側に手を貸しているのだろう。それは少し考えればすぐにわかることだ。

レッドローズに手を貸しレイティの正体を暴こうとしている。でなければ、わざわざ守護者が安易に手出しできない場所まで連れて来るはずがない。

簡易ベッドに拘束されているレイティからは見えないが、彼女が与えられる苦痛に反応すると側に置いてある機械がそれを測定して波打つ。

締め付け、焼き付くような痛みは時々より一層の激しさを増す。それは予想以上の痛みで目の前が真っ白になり、少しでも気を抜けば気絶しそうだ。

それだけは絶対に避けなければならない。自分の中に何かが侵入してこようとする異物感が、意識を手放すことで自分を支配しようとしている気がしてならなかった。

相手の策略にこれ以上はまってはいけない。


「あ゙あ……」


今レイティがするべきことは、どんなことをしても絶対に意識を手放さないこと。だが行動で示すのは難しい。

レイティは両手で拳を作った。渾身の力を込めているせいか、手は白くなり爪が手のひらの肉を割いて血を滲ませていようとも、本人は気にしない。

いや、気にしている余裕などなかった。胸まで焼けるように痛み始め、いよいよ危険な状態になってくる。

死ぬほどの苦痛とはよく言うが、まさにこれがそうだと思う。しかし死ぬほどと言っても死にはしない。

目が眩む中で、未だ意識を繋ぎ止めていられるだけで精一杯だ。大の男でも気絶する者はいるのではないかというくらい壮絶な苦痛だ。


(まだ……まだいける。せめて、アベルが気づいてくれるまでは、絶対に負けないっ……!)


かろうじて意識を繋いでいられる理由は、レイティの強い精神力に他ならない。気絶しそうになれば再び両手に力を込め、苦痛に耐え続ける。

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