‡†ダブルローズ†‡

□第六章
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「今から着替えるから早く出てって」

「痛いんだろ? 手伝ってやるよ」


耳元で吐息混じりに囁かれる。顎から顔の輪郭を指でなぞり、首筋へ差し掛かる。

同時にレイティは何かに耐えるように顔をしかめてその手を払いのけた。


「変態! 君に手伝われるくらいなら、痛みに耐えるに決まってるでしょっ」

「感じたくせによく言うぜ」

「かっ……誰が!? 出てって!」


一気に顔が熱くなる。真っ赤に紅潮しているのが自分でもわかった。

そんなレイティの反応を見てカインはくつくつと喉の奥で笑いを噛み殺す。もう少しからかっていても面白いが、時間がないと思い直し部屋を出ていった。


「最っっ低!」


カインがいなくなるや否や、レイティは扉を睨み付けた。だが本当にカインはいなくなったみたいなので、盛大にため息をつき痛む体を動かしてベッドから下りる。


(キルに治療してもらうしかないわね)


前に彼から言われた通りになってしまったと苦い表情をする。それから少し時間をかけて着替えを終え、鏡台の前に移動した。

櫛を手に自分の髪を梳かそうと鏡を見た途端、レイティは思わず目を見張る。


「うわ……」


鏡に映るのは耳まで真っ赤になっている自分の顔。

いつもカインにからかわれる時でも、ここまで赤くはならない。間違いなくカインが言ったあの一言が原因だ。


(ほんと最悪)


今日一日、嫌なことが起こりそうな予感がするレイティである。

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