‡†ダブルローズ†‡

□第五章
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(ついさっきまであんなに思いつめた顔してたのに、何だこの変わりようは)


内心突っ込みを入れるキルだったが、それを口には出さずただ目を伏せる。自分がいるから無理に明るく接しているのは目に見えていた。


「ああ、それとお前のパートナーから伝言だ」

「伝言?」


思い出したように言われ、レイティは首を傾げる。しかしキルの口から告げられた言葉を聞いた途端、顔色が真っ青になる羽目になった。


「『俺にお前を運ばせた礼の分、貸しに上乗せしておく』だそうだ」


"貸し"ということは、秘密で買った護身用具の時の約束に上乗せするということ。つまりは更にこき使われるということだ。

このあとレイティから悲鳴と、カインに対する罵倒が禁魔城中に響き渡ったのは言うまでもない。


「相当嫌っているんだな」

「当たり前よ! 極悪嫌味男の何処を好きになれって言うのっ」


物凄い気迫にキルも、少しばかり面食らったように目を瞬かせる。そしてふと悩む。


(本人が部屋の外にいることは言わない方が良いのか?)


ちらりと部屋の扉の方を見るが、レイティは気づいていない様子。しかし止まることを知らない罵倒の数々に、扉の方からひんやりと冷たい空気が流れてくる。むしろ殺気すら感じられた。

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