‡ダブルローズU†
□第二章
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そこは今や誰も住んでいない一軒家。しかし何も置いてないと思いきや、中には家具が揃っている。それらは埃を被っていた。
殺風景なその場所にその男はいた。どこか憂いを含んだ表情で彼は家の中を見渡す。
家中を散策するかのように歩き回る男の足取りは確かで、まるで自分の家にいるかのような正確さである。
足を踏み入れたのは、質素だが女の子らしさを感じさせる部屋。ベッドに近付き腰を下ろした男は目を伏せる。
瞼の裏には何が思い描かれているのか。
やがて男は目を開くと名残惜しそうな笑みを浮かべ、部屋を出た。
家を出ようと動いた足が不意に止まる。視線の先には地下へと通じているのか、簡素な階段がある。
素通りしようとしたがしかし、何かの暗示にかけられたかのように足が勝手に階段へと向かうのだった。
階段を下り、さほど長くない廊下を突き当たりまで歩いて着いたのは、冷たい鉄の扉の前。重たい扉を開け通り抜けると目の前に広がった光景は、常人なら目を疑うもの。
何を縛るのか鎖や壁に付けられた枷、無機質な台の上に無造作に置かれた鞭や蝋燭等。そしてそこら中に滲んでいる血痕のような染み。
一言で言うならばそう、まさにそこは拷問部屋だ。