‡†ダブルローズ†‡
□第十七章
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陽が山の頂から顔を覗かせた頃、そこは光の射さない深い森の奥深く。一際目立つ銀は美しく艶やかだった。
「リード様、まさかの事態が起きやしたね〜」
そう言うは脇に跪く黒い影。たった今この先にある城から、とある少女によってここまで飛ばされた。
気丈で強く、それでいて弱く儚い深紅の美しい少女によって。
銀の男は彼女を想い、歓喜に口の端を緩める。愛しい者を思い浮かべるような表情の裏で男は何を思うのか。
「そうだね、予想以上の力だよ。あの子は絶対返してもらわないといけないよ。レイティは俺だけのマリオネットなんだからね」
「ではまた接触しに乗り込むんすか〜?」
「いいや、一度レッドローズへ帰ろう。シナリオ通りに駒を進めるために準備しないといけないからね」
黒い影は主人の判断に抗うことなく了解する。が、何かを思い出し主人を見上げた。
「そういえば、あの玩具はどうするんで? 捕らえられたと聞きやしたが」
「ああ……そうだったね」
男はつい今しがたまですっかり忘れていたようで、たいして気にした様子もなく呟く。
気まぐれに相手をした女。強欲で欲のためなら手段を選ばない、自分が欲するあの子とは正反対の女。
利用されていることすら気づかず思うがままに動く玩具。
自分を求めるがゆえに、あの子を殺そうと企てた女を思い出した男の笑顔は一変する。氷の仮面が覆い偽りの笑みが姿を現す。