‡†ダブルローズ†‡

□第十章
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雲一つない青空の中、長い深紅の髪を風に揺らしながら歩く少女がいた。その半歩後ろには、いつも少女をからかう淡い青色の髪をした少年。

少年の手にはいくつかの買い物袋が握られている。普段の彼からは到底似合わず、あまりに不釣り合いで街人もすれ違う度に振り向いた。


「おい、まだ何処か寄る気かよ」


カインはやや不機嫌そうにレイティを見下ろす。しかしそんな彼に怯むどころか、楽しそうに当人は笑う。


「もちろん! 久しぶりの街だから、必要な物は買っておかないと」


今日は物凄く久しぶりの休日。ずっと慌しくて休みなんてなかった。

あえて言うなら、クロノスの事件で療養した時以来か。被害に遭った事件のおかげでの休みとは、皮肉なものだ。

いつもは軍服に身を包んでいる二人も、今日は私服。

レイティは半袖の白いワイシャツに緩く巻いたネクタイ、黒のショートパンツ。

対してカインは紺のシャツに黒のジャケット、ジーンズというシンプルな格好だ。


「必要な物なら邸の使用人に言えば揃えてくれるだろ」

「女心をわかってないわね。自分で選ぶから楽しいんじゃない」

「…………俺には理解し難いな」


むっとして腰に手を当てるレイティに、カインはため息混じりに呟いた。

レイティが休みの時は必ずカインかアベルも休みになる。いつもはアベルなのだが、カインにも休息は必要だということになったのだ。

しかし本人は出仕すると言うものだから、フェイクトから『明日のお前の任務はレイティを見張ることだ』という、命令が下された。

ちなみにその時、フェイクトに意味深な眼差しを向けられたレイティはその意味を汲み取り今に至る。

レイティが街中を一人でうろつけばカインも付き合わないわけにはいかない、という考えだ。

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