‡†ダブルローズ†‡
□第九章
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《王都検問所前》
時は少しばかり遡り、陽が落ちレイティとアベルが稽古を終えた頃。王都から外へと出る検問所に小さな集団はいた。
その中で先頭にいた馬が馬車の脇へと移動し、馬上の淡い青髪の少年が止まっている馬車の扉を開ける。
「ブレイド王子、ここから先は危険が伴います。良いと言うまで絶対に馬車から出ないでください」
「わかった。カインに任せるよ」
馬車の中にいたブレイドは、カインを信用した目で笑ってみせた。
この場所は、王都の一番端にある場所。地形が高いため広い王都を一望できる。
薄暗い空には月が現れ、数えきれないほどの星が光り輝く。城の手前に広がる、これから賑わうであろう街には灯りが点いていくのが見えた。
中でも一際目立つのはもちろん、ブレイドの家でもある王城。白い大きなその建物は灯りに照らされ昼間より一層、幻想的に目を惹き付けた。
「レイティも、そろそろアベルの家に帰る頃かな?」
「……そうですね」
時間帯的に自分のペットもといパートナーが、眼帯した猫目のアホ男と共に家へ帰る頃。
自分がいないからこそ、いつもより早く帰れるだろう。
明るくなった街へ目を向けるが、さすがに人の姿まで見えるはずもない。
(護衛の方はアベルがいるから心配いらないだろうな)
内心、そう呟くと彼らに託されたある"仕事"を思い出す。