‡†ダブルローズ†‡

□第八章
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レイティの怪我がすっかり治って出仕できるようになったある日のこと、彼女はアベルと共に普通なら馴染んではいけない場所にいた。


「レーイティー!」


嬉々とした満面の笑顔で突進してくるのは、王族が身に纏う服へ袖を通した黒髪の少年。

体当たりの如く飛び付かれ、レイティはその少年を受け止めながらも押し倒されるように尻餅をつく。


「おー、いつもながら大歓迎だなー」


その様子を見ていたアベルは、いつもの光景に軽快に笑う。王族を前にしてもこれだから凄い。


「お久しぶりです、ブレイド様」

「ほんとだよ。全然来てくれないんだもん」


むすっと頬を膨らませる一国の王子に、レイティは苦笑して謝る。

復帰してから前以上にカインにこき使われるわ、稽古やらで駆けずり回っていた。そのため最低でも週に二回は会いに来ていたはずだが、ここしばらくはこの部屋を訪れていなかった。


「ブレイド、仕方のないことですよ? レイティさんもアベル様もお役目で忙しいのですから」


やんわりと宥める声にそちらへ目を向けると、ブレイドと同じく黒髪のレイティと同い年くらいの女。彼女もまた、王族の身に纏うドレスを着こなしていた。


「アリフィー様もお久しぶりです。しばらく顔を出せず、すみませんでした」

「いいえ、レイティさんもお元気そうで何よりです。アベル様もお久しぶりですね」


王女である彼女からの挨拶に、アベルもまた、いつものように笑顔で返した。

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