‡†ダブルローズ†‡

□第四章
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「これがブラックローズの王都……」


あれから一週間、王都に着いたレイティの呟きは静かな朝の街に通り抜けた。他より遥かに大きな街が広がっており、その中心部に壁に囲まれた広大な敷地が見えた。

広い庭園といくつかの建物の奥に、一際大きな石造りの白い建物──王城がある。

早朝ということもあり、人通りはほとんどないに等しい。わざとこの時間を選んだため、あまり警戒する必要はないだろう。

レイティはフードを被っていて、目立たないように顔を隠している。深紅の髪はどちらの国でも珍しいため人目を寄せないためだ。


「先に城に行く。クロノス、お前はどうする?」


カインは隣に並ぶクロノスに目を向ける。クロノスは元々守護者ではないのだから、王の命に従って動いていたわけではない。


「私も国王陛下にお会いするつもりです。レイティさんのことも報告しなくてはいけませんので」


レイティの謎の体調不良は王都に近付くにつれて酷くなっていた。しかし王都に入ってからは不思議と落ち着たようで、今はじっとしている。

後ろからカインの視線を感じ、レイティは後ろを振り向くことなく小さく笑う。


「心配してくれてるの?」

「はっ、そんなわけないだろ。王の前でぶっ倒れたりするなよ。お前は俺の奴隷(パートナー)なんだから、礼儀も弁えろ。俺にまでとばっちりが飛んでくるのは御免だからな」


冷たい口調で嫌味を言われるのにも、レイティは既に慣れた。軽く笑ってさらりと返す。


「相手は君みたいなただの守護者じゃないんだし、言われなくても失礼なことはしないわよ」

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