‡†ダブルローズ†‡

□第二章
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その日の晩、ある店の地下で深紅の少女は牢の中から、自分を見ている男を睨んでいた。


「いい加減、この首輪外して外に出してくれない? 誰があたしを買いに来ても同じことだって、そろそろわかったはずよ」


彼女の鋭い視線の先には、昨日一風変わった見学者をここへ連れてきた男。男はあまりにも冷酷に作った笑みを浮かべて少女を見下ろす。


「明日出られますよ。レイティ、あなたは大事な商品ですから首輪を外すわけにはいきませんが」

「あたしは誰の奴隷にもならないって……! ゔあっ」


深紅の少女、レイティが言い返そうとした時彼女は苦痛の声を上げた。痛みから逃れようと体を捩るも、その度に鎖がきつく巻き付いて動けない。


「痛いですか? 私がその首輪を外さない限り、あなたは一生奴隷のままだ」

「うあ゙……い、や……うっ」


苦痛を耐えながら未だ抵抗するが、首輪の締まりが強くなる。気絶する直前に首輪が緩められ、レイティは咳き込む。

肺に沢山の酸素を送り込み、肩を上下させて呼吸を整える。生理的に流れた涙に濡れた瞳で男を睨み上げる姿は毅然としていて、少しも屈してなどいない。

その視線を受けても、男の不敵な笑みが消えることはなかった。


「一つだけ教えておいてあげましょう。今まであらゆる手段を使って逃れて来たあなたも、今日がここで過ごす最後の晩です。あなたはもう逃げられない」


嘲笑と共に軽蔑の眼差しがレイティに向けられる。眉根を寄せて訝しむ彼女の反応に気を良くし、男は軽快に笑い声を上げて立ち去った。

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