外伝集

□聖夜の勝負
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十二月。一年を締め括る最後のこの月には、特別な日がある。

クリスマスイヴを目前に、恋人のいる守護者が休みを取ろうと争うのは、毎年見られる光景だ。自由が少ない職に就いているがゆえに、せめて聖夜だけでも恋人や家族と共に過ごしたいと思う者は少なくない。


「ツェイチス長官、二十四日なんですが、休みを取らせていただきたいのですが」

「あ、ずりぃぞ! 長官、自分は半休が欲しいです!」

「自分は二十五日で」


王都長官、フェイクト=ツェイチスの執務室には休みを取りたいという守護者が殺到していた。見向きもせずに仕事を続けているフェイクトだが、一応耳は傾けているらしい。


「お前たち以外にも、休みが欲しいという者は多いからな。希望者は交代番にする予定だ。異論は認めん」


相変わらず抑揚のない声で、決定事項を告げるフェイクトは暴君のようである。しかし、より多くの者に、大切な人と過ごす時間を与えようという粋な計らいだ。

カインからのお使いで長官室まで来ていたレイティは、彼らの会話を耳に挟みながらも、こちらに気づいて手を伸ばしてきたフェイクトに調書を提出する。受け取った調書に、フェイクトはその場で目を通す。


「都合をつけたい時間なら聞いてやる。要望通りになるとは言い切れんがな。……レイティ、この調書は預かる。代わりにこっちを持って行け。別の案件の調書は、後日でも構わないとカインに伝えろ。アベルは廊下か?」

「分かりました。アベルなら、ここが混み合っているから外で待つって言ってましたよ」

「そうか。これはお前には重いだろうから、アベルに持たせるといい」


守護者たちに受け答えしながら、レイティに仕事の話を振ってくる。時間を無駄にしたくないのだろうが、器用すぎる。

こんな時でも、レイティに対する気遣いを忘れないのはさすが紳士だ。分厚い書類を山積みに受け取ったレイティは、その重さに一瞬よろけそうになるも立て直す。

下がっていい、という声に頷いて踵を返すと、群がっていた守護者たちは道を空けた。そのうちの一人が書類を持つのを手伝ってくれ、別の守護者が扉を開けてくれた。

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