外伝集
□双子の受難
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謁見の間より更に奥。そこはかつて、暗黙の了解で誰も立ち入ることのなかった部屋。
守護者を統制する双子の部屋として知られていたが、実際にその双子を見た者は限られていた。
そう、あの時。とある会議のあの瞬間までは。
『むむ、どうやら既に始まっているようじゃ』
『なかなか面白い討論のようでありまする』
小さい背丈にモコモコした髭、真っ白な髪。糸のように細くやんわりとした目。
口調は違えど全く同じ声音。地顔が笑っているように見えるそっくりな彼らが唯一違うのは、それぞれの雰囲気のみ。
表舞台には一切現れず陰から守護者を統制し、王と共に国を支えてきた双子の総帥。一匹の美しき黒蝶の処遇を巡る会議で初めてその姿を晒した彼らは、それからは表舞台に立ってその手腕を振るう。
そんな彼ら――いや、双子の片割れラファには、試練の日々が待っていた。
長官室より尚広い執務室。整理整頓の行き届いたその部屋で、双総帥はいつも通りに並んだ執務机に向かっていた。
広いこの部屋に小さな二人組は更に小さく見える。
意見を交わしながら執務をこなして数刻、双子の弟ラファは早くも限界が訪れようとしていた。