外伝集
□腐れ縁の始まり
1ページ/10ページ
ブラックローズ王都。そこにあるのは国王のいる城。
この日、城では新たな守護者を選出するための登用試験が行われていた。
守護者とは、総帥の指揮下にあって王に絶対の忠誠を誓う者。そして民衆のために剣となり盾となり、政を担う者。
誰もが憧れる存在である。
数年に一度、我こそはという者たちが身分問わず集い、自らの腕を試すのだ。
試験はいくつかあるが、中でも三つが重要となる。
守護者として、知っておかなければならない知識を問われる筆記。
素質を見極められる質疑応答。
そして、単純に戦闘能力やその他諸々の実力を評価される実技試験。
一見して簡単のようだが、単純だからこそ厳しい試験でもある。
「あー、やっべぇ。筆記で落ちたかもなー」
緊張感溢れる中、その空気をぶち壊しにする呑気な声がする。
声の主は、癖のある薄紫色の髪をしていた。浅黒い肌に精悍な顔立ちをした活発そうな少年である。
最も彼の印象を強くしているのは、猫目と片目を覆う黒い眼帯だ。明るそうな性格とは裏腹の見た目が、傍目に変人だと思わせていることを当人は気づいていない。