外伝集

□記憶の真実
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レイティが酒に弱く飲むと変になることを知ったのは、彼女が初めて酒を飲んだ時のことであった。

仕事後の稽古を終え、珍しくすぐに目を覚ましたレイティは、その日アベルの提案でカインも含めた三人でバーに向かった。

成人を迎えたばかりで酒を飲む機会もなかったレイティの初体験。数種類の酒を混ぜ合わせて作るカクテルを飲んだ時、それはそれは飲み口が良くすぐに気に入った。


「もう一杯同じのください!」

「かしこまりました」


目を輝かせたレイティが同じのを頼めば、バーテンダーはまたカクテルを作る。その作り方も面白く、どれだけ見ていても飽きることがない。

新たに渡されたカクテルもカインとアベルと談笑しながらゆっくりと飲み干していき、再び頼む。


「おい、ペースが早いぞ」

「そう? まだまだ大丈夫よ」


次を頼もうとしたところで横から待ったをかけたのは、彼女の飲んでいるものより数倍強いカクテルを素面で飲むカイン。

眉根を寄せて三杯目に突入しようとするレイティを制する。だが当の本人はきょとんとした顔だ。


「まだ顔も赤くねぇし、こんくらいじゃ大丈夫だろー。せっかく美味さを知ったんだから飲まなきゃ損だって」


カインが気遣っているのを知りながらも、アベルは危険視せずにレイティに酒を勧めた。

これが後に仇となる。

ペースを落とすことなく飲み続けた結果、レイティは壊れるのだった。

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