外伝集
□サンタさんへ
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厚い雲に覆われた空からは、大粒の雪が降り積もっていた。何色にも染まらない、真っ白な雪はふかふかの絨毯のように辺り一面を埋め尽くす。
美しい景色の代償に、凍りつくほどの寒さを生む。
雲に覆われた空は月すらも姿を隠し、辺りを微かに照らすものは空から舞うように降ってくる白銀の粒だけ。
闇夜に紛れて、雪を踏みしめる音が響く。静寂を破る音はいくつも聞こえ、そこらかしこで響いている。
足音の主は家々を渡り歩くように移動する。
そんな中、暗闇に浮彫になるように赤が現れた。
「そこ滑るから気をつけろよ」
聞き逃してしまいそうなほどの小声で注意する男の声に、赤いものが頷くように動く。赤い何かは一軒家の前で止まると位置が低くなり、そしてまた元の高さに戻った。
「この辺は終わったぞー。あとは街外れ一帯を回って終わりだ」
赤いものの後方からまた別の男の声がする。小声ながらも弾んだ声は、寒さなど忘れてはしゃぎ回る子供のように軽快だ。
赤いものを挟んで黒い影が二つ、並んだそれらは周りの影と合流して闇夜に溶け込む。
先ほどまでいた一軒家の玄関先には、白い袋がぽつんと置き去りにされていた。
降り続けていた雪が止み、朝日が街を照らす頃。この日を待ち望んでいた子供たちが目を覚ます。
そして送り主不明の白い袋を見つけると嬉々として手に取る。どこの家庭でも同じ光景が見られた。
それは、ある場所でも同じだった。