short

□パロディ!7
3ページ/7ページ

(東夢)

どんな姿だって。





V.狼男





「ね、今日飲みに行かない?」

「え!?」


ある程度の仕事が終えたところで、同じく教師の彼女は声をかけてきた。


「こんな雨の中?」

「雨だからこそパーッと!」

「・・・」

「なんかさ、今日文化祭のときにあきらくん見たらさ、久しぶりに昔のこと話したくなっちゃって」


どうしようか困っているとそういわれた。

彼女も高校時代からの友人だ。
あきらと同じく。

だから今日の文化祭であきらを見かけて、そういう発想になるのは彼女らしいといえばらしいかも。


「・・・まぁいいかな」

「息抜きも必要ですよ!東先生!」

「お前なぁ〜・・・」


茶化すように敬語を使う同い年の彼女。

それに知らずうちに笑みがこぼれた。


・・・周期的に、今日は満月だけど。


大丈夫だと仮定して、オレはゆっくり彼女と歩き出した。


「・・・しかしホントに雨すごいなぁ」

「雨って結構好き!!」

「・・・オレも好きかな」


隣を歩く彼女に合わせて歩く。
着いた先は、小さな居酒屋。


「・・・明日も仕事だし、軽く・・・」

「今日はジャンジャン行きましょう!!おじさん!焼酎!!」

「・・・」


席に着くと彼女はしょっぱなからいろいろと頼みだした。


ゴロゴロゴロ・・・


雷が遠くで鳴った。
この分なら、きっと大丈夫だろう。










「東くんってホント昔からモテてたよねー」

「ちょっと・・・」

「どこか欠点とかないのー?!知ーりーたーいー!おーしーえーてーーー!」

「・・・ちゃんと歩いてくれ・・・」


数時間後。
完全に出来上がってしまった彼女は、オレの手を握りながらもフラフラと歩く。


「・・・」


しかも最悪なことに、雨はだんだんと止んできている。
できれば飲み終わったならさっさと帰りたい。


「・・・ちょっと!!」

「ん〜?どしたの〜?」


彼女はぺたんと座り込んでしまった。
・・・送らなきゃちゃんと帰れるかわかったもんじゃない。


「早く帰るぞ」

「送ってくれるのー?そーんなことするから勘違いされちゃうんだよー」

「お前送らないと帰らないだろ?」

「そーんなことありましぇーん!」

「っ!」


雨が、止んだ。


「・・・早く」

「!?」


急かすように腕をぐいっと引っ張って、背中に乗せる。


「・・・」

「寝ちゃっていいから」


そういえば彼女はゆっくりと頭を背中に預けてくれた。

これで寝てくれれば、バレずにすむ。


「・・・っ」


雲が流れだした。
もうすぐ月の光は届くだろう。


オレは半分だけしか血がないから、狼化するのは少しだけ。
耳が生えてきて、歯が鋭くなって。
我を忘れるまでにはいたらないから・・・まぁとにかく寝てくれ。

そう思ったのに。


「・・・降ろして!!」

「わっ?!」


いきなり背中の彼女は暴れだした。
咄嗟に手が外れて、彼女は落ちる。


「ご、ごめんな。平気か?」

「・・・あ、東、くん・・・?」

「え?」


ふわっと淡く照らし出される彼女。
彼女の上にかぶさるオレのシルエット。


・・・やばい!!


「ご、ごめん!オレ帰るから!」

「ま、待って!!」


酔いが驚きでさめたであろう彼女を置いてこうとして、腕を掴まれた。

なんて、説明すればいいんだろう・・・。


「・・・その耳はなに?」

「・・・これは・・・その・・・」

「・・・狼男・・・だったり?」

「・・・まぁ・・・えっと・・・うん」


狼男っていう妖怪は結構有名だと思う。
彼女も知っているらしい。
ピクピクッとオレの耳が動く。


・・・あぁ、遠くで犬の遠吠えが・・・


「・・・ふふふ・・・」

「え?」


彼女が突然笑い出した。


「ふふふふふふふふふ・・・」

「あ、あの・・・」


ちょっと怖くなって、近づくとバッと立ち上がった。


「東くんの弱点みーっけ!」

「・・・は?」

「東くんの秘密を知ってしまったー!」

「え・・・?」

「これで東くんはあたしのものさーーー!」

「はーーーーーー!?」


突然の宣言に、オレは夜にもかかわらず叫んだ。

・・・高校のときから、面白い子だと思ってはいたけど・・・


「・・・ばらされたくないでしょ?」

「・・・はぁ・・・」

「・・・あたしと付き合って」

「・・・」


彼女の言葉に言葉を失う。


「だって秘密なんて、好きな人くらいにしか知られたくないものじゃない?だから、秘密しったから、それくらいは心が許されたってことかなって」

「・・・」


まぁ不慮の事故だったわけだけど。

でも、そうかもしれない。

知られたくなかったら、徹底的に今日は避けただろうから。


「・・・うん」

「え?」

「いいよ」

「・・・は?」

「・・・付き合おうか」

「・・・へ?!」


彼女が今度は驚いた。
次には真っ赤な顔をする。


「・・・うぅ・・・」

「ん?」

「いつものスマイルに、犬耳なんて・・・」

「え?」


一応狼なんだけどな・・・


「反則よーーーーーー!!」


叫ぶ彼女はホントに真っ赤。

あははと苦笑すれば、それでも好きだーって絶叫の告白。


オレは恥ずかしくて、逃げるように彼女を家に送って帰った。


「・・・」

「・・・なに?」

「・・・東くんが狼ってなんかかっこいいね」

「?!」

「・・・どんな姿でも、やっぱり好きだな・・・」










だって、高校のときから、あなたのことが好きだったんだもん。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ