拍手お礼再録

□拍手お礼その5
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大陸に渡ってきたは良いものの、この骨から冷えるような寒さはいただけない。
もっとも、食事も酒もいただけないのだが。
北極の氷を撫でた風が、温まる前に吹き付けてくるのがこの国なのだろう。
毛のない頭じゃ寒そうだ、と帽子をくれた人情だけは日本と同じあたたかさだったが。
ジンジンと痛みを訴える耳に手をやって、氷のような冷たさに手のひらではなく耳が驚く。
思わず見つめた真っ赤な手に白く六花が花開く。
どこかで聞いたまじないを思い出して、故郷の人々の幸いを祈る。
北風の行き着く先に、この想いが届けば良い。
溶けずに舞い上がった雪片の行方をそっと目で追う。

fin
―――――
幇間探偵しゃろくより舎六さん独白。
原作者が亡くなり、連載が終了した直後に考えた話なのですが、冬になるのをまち、最終巻発売を待ってからの更新となった拍手です。
いつの間にか藤の花の散る季節となっておりました。

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