Private Lesson 番外編 フォレスト版

□初めてのクリスマス
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お兄ちゃんと付き合いだしてから初めてのクリスマスを迎えた。

「ジングルベール♪ジングルベール♪〜」

「つぼみはジングルベル派なの?」

「うんっ、お兄ちゃんは?」

「Silent night かな〜」

「それっ、伯母さんが歌ってくれたのだね」

「そう?子供の頃のことなのに、よく覚えてるね」

「うん、お兄ちゃん家に行くの楽しみだったから」

私の伯母さん、

つまり、お兄ちゃんのお母さん。

なんでも音大の声楽部とやらを卒業してるとかで、天使みたいな歌声してたっけ。

そういえば、伯母さんが生きてた頃は両方の家族が集まってクリスマスパーティーしてたんだ。

お兄ちゃんのピアノの伴奏に合わせてみんなでクリスマスソングを歌ったりして、

楽しかったなあ。

鍵盤を舞う細くしなやかな指をうっとりと眺めた記憶がある。

五年前、伯母さんは亡くなり、

伯父さんは、その翌年、会社の秘書と再婚した。

間もなくして男の子が生まれると、

お兄ちゃんは高校生だというのに今のマンションに一人で暮らしはじめちゃうし、

そうして、クリスマスはバラバラに過ごすようになっちゃった。

子供ながらに、お兄ちゃんが遠い人に感じて悲しかったなあ。

だって、お兄ちゃんは伯母さんが亡くなってからあんまり笑わなくなってしまったから。

だから、また、こんな素敵なクリスマスがくるなんて思わなかった。

しかも、今年は二人きり…

「つぼみ、このエプロンしなよ」

フリルのついた白いエプロン。

胸当てがハートの形になってるよ?

「わぁ、可愛いっ!これっ、どうしたの?」

「どうしたのって、そりゃあ、買ったんだよ」

「私のために?」

「そうだよ、他に誰のために用意するっていうの?」

わかってるっ!

わかってるけど、お兄ちゃんにそう言ってほしくて聞いてみたのっ。

「お兄ちゃん、ありがとうっっ」

お兄ちゃんに思いっ切りきり抱きついた。

「どうしたの?つぼみは甘えん坊だな」

「えへへっ」

だって、お兄ちゃんに、こんなラブリーな趣味ないよ。

いつもは私の趣味を子供っぽいってからかうくせに、どういう風の吹き回し?
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