アイアンの門を開け薔薇の温室のある庭をぬけると、やっと玄関に辿り着いた。
ピンポーン♪
「はーい」
出迎えてくれたのは、温室の薔薇よりも美しい一華(いちか)伯母さん。
「今日はお招き頂きありがとうございます」
お母さんと練習した通りにお辞儀をして薔薇の花束を伯母さんに渡す。
「ようこそ、いらっしゃい。素敵な花束ね。ありがとう」
「こんにちは、一華さん、今日は娘達共々お世話になります。主人も後からお邪魔しますね」
「さあ、どうぞ、上がって、寒かったでしょう?」
「お邪魔します」
いつ来ても綺麗なお家だなと思う。
ここのお家に来るのは大好き。
庶民的なうちとは違って、何もかも洋書に出てくるようなものばかり。
「つぼみちゃんは本当に可愛いわね。何年生になったのかしら?」
「背も小さいし、まだ子供っぽいけど、もう4年生なのよ」
伯母さんは、会う度に可愛いって言ってくれるけど年齢より幼くみえるはコンプレックスなの。
「あら、そうなの?子供の成長って早いものね。お姉ちゃんの舞ちゃんは、うちの未来の2つ上よね?」
「そうそう、高1なのにマセてて大学生に間違えられるのよ。それに最近の舞の言動には頭を悩ませられてるわ」
お母さんが言うには異性関係とやらが派手で心配なのだそうだ。
高校に入ってからは無断で外泊もするようになったし。
「そう言えば、舞ちゃんは、もう来てるのよ」
えっ、お姉ちゃん、先に?
なっ、なんか嫌な予感がしちゃう。
「つぼみちゃん、そのワンピース着てくれたのね。よく似合うわ。とっても可愛いっ」
私には先を急いで行きたいところがあるのに、ギュウッと抱きしめられてしまった。
伯母さんの香水の薔薇の匂いが広がって心地いい。
「伯母さん、素敵なワンピース、ありがとう」
「髪も巻いてあげましょうか?」
「本当?伯母さんみたいに?」
「そのワンピースに合いそうなリボンもあるのよ」
どんなリボンなんだろう?
きっと可愛いに違いない!!
伯母さんには女の子がいないからお姫様みたいに扱ってくれるし、
お母さんの趣味とは雲泥の差で、乙女心をときめかせるプレゼントをいつも用意しておいてくれるの。
このフランス人形みたいなシルクのワンピースも伯母さんのお手製なのだ。
可愛いけれど子供っぽくはない。上質な肌触りは本物を感じさせる。
そんな伯母さんに髪を巻いてもらうなんて、とても魅力的な誘いだけど、
何といっても、ここには私の大好きな綺麗な王子様がいるの。
「伯母さん、あのね、未来お兄ちゃんは?」
「舞ちゃんと2階のお部屋にいるわよ」
やっぱり、先を越されちゃった。
「渡したいものがあるから、リボンより先に行ってもいい?」
「どうぞ、ふふっ、未来に渡したいものって何かしらね〜」
「えへへっ」