未来 ーsideー
「雨がやむまででいいから…」
「えっ?何?」
「私を抱いてくれない?って言ったの。一ノ瀬くん?」
バスタオルを差し出す僕の手の上に彼女は冷えきった手を重ねた。
「風邪ひくからシャワー浴びた方がいいよ。着替えも僕のでよければドアの前に用意しておくから」
「温めてほしいな。一ノ瀬くんの体で」
シャワーを浴びる気はないらしい。コートを脱ぎタオルで髪を拭いている。
困ったな。女の子の方から誘われることはよくあるけど、正直、同じ学校なんて後々面倒だなと思う。
「何かあったの?」
「私ね、今の学校辞めるの…」
そういうことか…
「義理の父親の暴力が酷くて、母親の実家の方に引き取られることになったから転校するの」
きっと暴力だけじゃない、
彼女はコートの下は下着一枚身につけてなかった。
「安心して、一度抱かれたくらいで付き合ってくれなんて言わない。来学期にはいないから、もう会うこともないの」
横を向いてはいるけれど、伏し目がちな瞳が少しだけ動いて僕の反応をうかがっているのがわかる。
「僕が本気になったとしたら?」
「お世辞が上手ね。でもわかってる。一ノ瀬くんは私みたいな女を決して選ばないって」
何故かと理由は聞かない。
その答えは僕自身が一番わかっている。
僕は彼女のような女を好んでは情熱的に抱くけれど愛情を抱いたことは一度もない。
「ねぇ、もう来て?」
自分から大きく股を広げると一糸纏わない魅惑的なメスの武器で挑発してきた。
「前戯なんてしなくていいわ。もうここビチョビチョだから」
「たっぷりと濡れて美味しそうだね」
「私を食べて?」
「いつもこんな風に男を誘うの?」
「だめ?」
「いや、悪くないよ」