Private Lessonフォレスト版
□Lesson20
1ページ/3ページ
部屋に戻るなり洗面所で口の中を何度も何度もすすぎ、それでも足りずに乾いたタオルで唇をゴシゴシと擦る。
麗さんのあの唇の感触を忘れたい。
「つぼみ、どうしたの?」
「私っ、私、麗さんにキスされたの…」
お兄ちゃんの表情を盗み見ると驚いた様子もなく、ただ辛そうな顔をしていた。
「だから麗さんの唇を噛んだの…そしたら、自分の唇も噛んじゃったの…」
大粒の涙がホロホロと瞳から、心からも流れだす。
「つぼみ…、そんなに擦ったら血が滲んでるよ…」
そっと唇を重ねようとするお兄ちゃんから顔を俯いて逃げた。
「それに、私、薔薇の下で、お兄ちゃんにされながら…、麗さんに色目を使っちゃったよっっ」
「知ってる…」
知ってるって…
私の裏切りを小さなことと許してくれるの?
許してくれなくてもそれはそれで困るけど……
けど…
「これって浮気じゃない?私が麗さんを挑発なんかしたから、あんな目に…、お兄ちゃんを裏切った罰だよ。そうだよ、きっと…私が淫乱だから…」
口にすればするほど、むざむざと蘇ってきて気持ちの行き場がみつからない。
あんなに豹変してしまった麗さんが恐かったし、
軽卒で無知な自分も恨めしい。
「そんなことない、そんなの浮気でも淫乱でもなんでもないよ」
お兄ちゃんは簡単に麗さんと二人きりになったことさえも責めはしない。
それどころか俯く私の顔を無理に直そうとはせず、そのまま優しく抱きしめてただ涙が治まるのをひたすら待ってくれた。
……ねえ、お兄ちゃん、やきもちは焼いてくれないの?
やさしいのはわかるけど…
なんで平気なの?
私は艶子さんがお兄ちゃんのを口でしたことがあったこと、
お兄ちゃんが腰が砕けそうだったなんてうっとりと言ったことに、
過去のことかもしれないけど嫉妬に胸が焼け焦げそうでしょうがないのに…
それに私だってちょっとは麗さんのこといいなって思っちゃたんだよ。
負け惜しみなんかじゃなくって…
いいの?
“あんまり一途すぎるのもどうかな?”
“男をつけあがらせるぞ。もっと引いてみな?追ってくるから”
さっきの麗さんの言葉が頭をよぎる…