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□河合曽良の子供の頃
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入道雲が頭をもたげる空の下、涼しげな木陰で松尾芭蕉の弟子・河合曽良は熟睡していた。
信濃国にある、諏訪湖の畔の村で曽良は生まれた。
その後、両親が病で他界した。
曽良は伯母の家に引き取られ養子となった。
齢が数えで十四になった年、養父母が他界。伊勢国の親戚の家に引き取られた。
こうして多くの人の死と直面してきた曽良は段々と、感情を表に出さなくなっていった。心を閉ざしてしまった。
そうして月日は流れ、曽良が数えで十六になった年、彼は彼自身を変える、一人の人と出会った。
そう、この人物こそ彼の凍てついた心を解かす事の出来る人、松尾芭蕉その人であった。
「そーらくーん?あれ、寝ちゃってる…」
転げそうになりながら、駆け足で芭蕉は曽良のいる木陰にまでやって来た。
木陰で眠る曽良を見つけた芭蕉はその肩を軽く揺すった。
「起きてー、風邪引いちゃうよ〜?」
どれだけ揺すっても起きる素振りを見せない曽良の穏やかな面差しを見て、芭蕉はそっと笑った。