書庫(短編)

□曽良の焼津土産
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 今年はちょっと長かったGWも明けて、また学校が始まった。
 傾きかけた日差しの入る生徒会室のソファで書類のチェックを行っていた妹子は扉が開いた事に気付いて振り返った。
「久し振りですね、妹子さん」
 生徒会室に入って来たのはやけにデカイビニール袋を2つも提げ、そのうえ台車までおしてきた曽良だった。
「曽良君久し振り。ところで、1ついいかな?そのビニール袋と台車はどうしたの?」
「ああ、これですか」
 曽良は思い出した様に自分の下げるビニール袋を見下ろした。
 台車を開いている左手で器用に押しながら生徒会長の机まで歩くと、その上に右手に持っていたビニール袋を置いた。
「ちょっと静岡まで行って来たんでお土産です」
 妹子は目を軽く見開いた。
 どこへ行ってもお土産など滅多に買う事の無い曽良が。
「静岡のどこ行って来たの?」
「焼津です」
「へ〜…」
 期待半分、不安半分だ。
 曽良は、ビニール袋を漁り、二回りほど小さなビニール袋を取り出した。中には結構な量の何かが入っている。
「妹子さんのです」
「わー、ありがとう。何が入ってるのかな?」
 袋の中から出てきたのは、缶詰。
 妹子の動きが止まった。
「マグロの水煮です」
「名前変えたってツナでしょ!?」
 その時、扉を叩く音が聞こえた。
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