書庫(短編)

□醤油
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 とある宿にて

 今日、泊まった宿の夕食は豪勢な刺身だ。
 醤油瓶が足りないらしく、一つしかない。それと後一つ、この醤油の問題点に僕は気付いていた。
 僕は芭蕉さんに醤油瓶を差し出す。僕の醤油皿はまだ白いままだ。
「曽良君、先に使っていいの?」
 芭蕉さんが尋ねるので頷く。
 芭蕉さんの醤油皿に醤油が溜まる。
「はい、どうぞ」
 醤油瓶を受け取る。改めて醤油を見ると、やはりそうだ。
「この醤油、傷んでますね」
「えぇぇ!?早く言ってよそれ!!松尾もう入れちゃったじゃない!」
 いつから気付いてたの?と訊く芭蕉さんに僕はしれっと返した。
「芭蕉さんが入れる少し前です」
 あの人が箸を取り落とす。
 箸は音を立てて机に落ちて転がった。
「じゃぁ言ってよそれぇ!気付いてたんなら言ってよぅ!!」
「確証がなかったので」
「このオニィ!!」


この後、醤油は厨房に行って取り替えてもらった。
 

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