書庫(短編)
□ポーカー
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鬼男と閻魔は、ポーカーをやっていた。
「うわぁー、フルハウス!?」
「大王の負けですよ」
現在、33戦目だ。
閻魔は11勝22負7連負の負街道全力疾走中。
鬼男は22勝11負7連勝の勝街道全力疾走中。
「もー一回!もー一回!もっかい勝負!」
「まだやるんですかぁ?」
騒ぎ立てる閻魔の顔を呆れ顔で眺めやる。
実は仕事を後回しにしてやっているのだ。
やらなければならない仕事が山ほど残っている。閻魔の為を思うと今すぐポーカーを止めて仕事に専念した方がいいのだが閻魔は聞く耳を持たない。
「おーにーおー君!ポーカー続きやろ!これで最後にするから!」
「分かりましたよ、負けてもこれが最後ですからね」
34戦目が幕を開ける。
〜30秒後〜
「僕の勝ちですね」
「また負けた〜!鬼男君ホント強いなぁオレ直ぐに顔に出るタイプだし」
そう言って閻魔は立ち上がると、執務室に向かった。
鬼男はその背を悲しい様な少し表現しがたい眼差しで見ていた。
感情を顔に出さないのが得意なのは僕よりもアンタでしょう。
あの屈託の無さそうな笑顔の裏に、別の感情が孕まれている事を鬼男は気付いていた。
直ぐに掻き消される、寂しげな表情に。
「素直に言えば、いいのに。秘書である僕にすらアンタは言ってくれないんですか」