書庫(短編)

□イカネコ
1ページ/2ページ

 すでに暗くなった階段を駆け上がる。
 僕の家はアパートの2階にある。偶然見つけた小型ペットOKのアパート。このちょっと古いアパートに僕は猫の大王と学生生活をエンジョイしている。
「ただいまー、だいおー、いたずらして無いよなー?」
 鍵を開けて部屋に入ると、変わった模様の(なんとなく人の前髪みたい)雑種猫の大王が跳びついてきた。
 長毛の雑種の猫なのだが僕はイカと猫のあいのこだと思っている。なんかシルエットがイカに見える。
「はいはい、分かった分かった」
 纏わり付く大王を引き剥がしながら奥に向かう。
 奥の部屋に置いてある餌入れは見事に空…ではなく、周りにカリカリ(乾燥してる餌)が散乱する酷い有様だった。
「大王、もうちょっと綺麗に食べてくれないか?」
 ナーと聞いているのか聞いてないのか呑気な返事が返る。
 この自分勝手な所が大王サマっぽくて名前にしたんだけどね。
 大王と出会ったのは2年前。ドシャ降りの雨が降りしきる梅雨の日の事だ。




 もうすぐ梅雨も終わるってのにその日は朝っぱらからドシャ降りの雨で。
 傘を差しながら家へ急いでたら猫の声が聞こえた。辺りを見渡したら、道端の草陰に器用に濡れない様に丸まっている猫がいた。
 そのとき僕は引っ越して来たばっかりで何も飼ってなかった。
「ァオウ」
 小さく鳴く猫に思わず手を伸ばした。
 それが、僕と大王の馴初め―――。
 



「だったよな?大王」
ひざの上の大王に確認を取る。答えなんか返って来ないけど、それは気にしない。
 今じゃ物凄く大切な家族だし、なんか上司(?)だし、もっとずっと長生きして欲しい。 ちょっとしたわがままだけど聴いてくれますよね、大王?
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ