書庫(短編)
□うたかたの夢殿
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ある上弦の月が輝く夜、飛鳥の京に住まう一人の陰陽師は夜空に瞬く星々に僅かな異変が起きたことに気が付いた。
しかし、京の人々に大きく関わるものでも災禍の予兆でもないため、しばらく様子を見れば問題ないと判断し、邸の中に戻っていった。
だが、この異変がある二人が大変なことになるきっかけとなった――――。
法隆寺にて、厩戸皇子もとい聖徳太子は変な臭いのする布団で寝ていた。
「ここは何処だ?クローバーが生い茂りまくってるでおま!」
太子の目前に広がるは「どんだけ育ってるんだ!」というツッコミが入るほどの大量なクローバー。
なぜクローバーがあるかというと、ここは太子の夢の中だからだ。
四つ葉を見つけてはむしるという幼児並みの事を繰り返しながらふと太子が呟いた。
「また、ケツ妹子が出てきそうだ...」
言い終わらない内に誰かに後頭部を引っ叩かれた。元からアホなのもあるが、背を向けていたため、隙だらけだ。