日向龍也

□大人気ない俺と無自覚な君U
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無鉄砲にがむしゃらに生きて良かったことなんか一握りだ。




流石に歳を重ねて落ち着いてきた俺が余裕を無くすなんてことは殆ど無ぇ…………







筈だった。














「あ……あの、えっと……」









これも経験だと現場に連れてきたのは良かったんだが……撮影の合間に俺の内緒の恋人は監督に絡まれていた。





「作曲家志望なんだって?」


「は……はい……」



「いや〜日向君がこんな可愛い子を連れてくるなんて初めてだから恋人かと思ったよ」


「こっ……こいびと……」



ぼふっと音がしそうな程顔を赤くする春歌。


そんな様子に、監督はケタケタと笑いながら春歌の腰を引き寄せた。


「冗談だよ! 助手もしているんだろ? 日向君から話は聞いているよ」


「は……はぁ……」



気持ちの悪い生温い手から逃れようとするが、どうも上手くいかない。
しかも脳裏には龍也の言葉。


"今日の監督は今話題のドラマを殆どやってる凄腕だからな"




下手なことをしてはいけないと、必死に笑顔を取り繕う春歌。









「あ〜ぁ……また始まったよ……監督のセクハラ」


「最近売れてきたからって可愛い新人見つけては手ぇ出してるってほんとだったんだな……」




龍也の周りのスタッフのヒソヒソ話しが耳に入る。


自分の出番は次で終りだ。





1テイクで終わらせてやる……







龍也のただならぬ黒いオーラに、側にいたスタイリストやコソコソ話をしていたスタッフの背筋は凍りそうな程冷えていった。










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