ひまつぶし

□忘れられない人
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『会いたくないなぁ……絶対気まずいよー……』



秋穂は、大いに嘆いた。



リョーマとは昼食の後に別れ、1人廊下を歩いていた。



『いや、待てよ?相手確か3年生とか言ってたし……会うことないかも。1年と3年って居室も離れてるし、大丈夫だ!!』

「ちょっと、」

『はいいぃっ!?』




拳を作って明るくそう言ったところで、背後からいきなりかけられた声に秋穂は声を裏返した。


少々赤くなりながらも後ろを振り向くと、そこにはかなり美人な人がいた。



美少年とも美少女とも言えるその整った顔に目を丸くしたものの、女生徒の制服を着ていたことから女であることが分かった。



秋穂が恐る恐る『何でしょう……?』と尋ねると、その少女は秋穂を睨みつけて言った。



「あんた、誰のノート踏んでるわけ?ぶん殴るよ?」

『っぇ、!?』




思わず目を見張って自分の足元をみると、そこには確かに淡い黄色のノートが落ちており、秋穂はそれをしっかりと踏んずけていた。




慌ててノートを拾って足跡を払う。





『ご、ごごごめんなさい!わ、私、全然、気付かなくて……………、


ッうぇええ!!?』

「……何よ」







秋穂は、自分の手にあるノートを凝視した。




少女は訝しげに眉根を寄せ、不機嫌そうなため息をついている。




秋穂はゆっくりと目の前の少女を見つめ、やがて震える口を開いた。




『あ、あの……つかぬことを、お尋ねしますが……』

「さっさと言いなさいよ、ノロマ」

『(ノロマ……)あ、あなたは……―――有野 流美さん……ですか……、?』






少女はますます苛立たしげに眉間のしわを濃くして、大きく首を振った。









「―――そうよ、有野 流美よ。なんか文句あるわけ?」



秋穂は唖然として、その少女をしばらく凝視していた……。


忘れられない人
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