ひまつぶし
□良好な友好関係
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なんたることだ。
「……何か用なわけ?」
『滅相もない』
秋穂がそう言うと、目の前の少年は「ふーん」と気のない返事を返した。
あまりにもじろじろ見過ぎたか、と反省した秋穂は鞄の中から家から持ってきた本を取り出して読んでいたが、その内容はまったく頭に入っていなかった。
『(……どうして、私の隣の席が……!)』
―――嘆く秋穂の隣の席で眠そうに欠伸をしているのは、自分のいる「テニスの王子様」の世界の主人公、越前リョーマだった……。
私立に行くのを渋っていた秋穂だったが、青春学園、氷帝学園、立海大付属さえ避ければあとはどの学校でもいいやと投げやりに考えていた。
家から1番近い私立にしようね、なんて家族で笑いあっていたのだが、その「1番近い私立」の名前を聞いた時、思わず凍りついた。
「ここから1番近いのは、……青春学園ね」
「青春学園?それ、正式名かい?」
「変わってるけど、なんか楽しそうな名前よ?ねぇ、秋穂」
『、え。あ、うん……』
思わずそこは嫌だと言いそびれてしまい、そのまま成り行きでこの学校に通うことになったが……。
『(隣の席……いや、越前くん好きなキャラだったし、嬉しいけど……、)』
できれば、関わりたくなかったなぁ。などと考えてみるものの、今更どうしようもないことは、秋穂にも分かっていた。
「ねぇ」
『…………え、わ、私?』
「アンタ以外に誰がいんの?」
『え、あ、ご、ごめん……』
突然話しかけられたことに驚き、秋穂はおどおどした様子で謝った。
「……別に謝んなくてもいいけど……さっきからチラチラこっち見てくるから、気になっただけ」
『っうあぁはいすみませんごめんなさい』
「いやだから……」
呆れたような顔をするリョーマに、秋穂はすっかり恐縮したように肩をすくめていた。
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