ひまつぶし
□さよなら、私の世界
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『まず……なんていうんだっけ、向こうに行ったときに、そこの住人として生まれてくる……、』
夢小説が好きな友達から、散々聞いたことがあった。
あまり興味がなくて、適当に聞き流していたのだが……。
神様は「あぁ、」と言った。
「もしかして、転生?転生トリップ」
『あ、多分それです。赤ん坊から始めるやつです』
「ん、了解」
「上手い具合いじってやろ」、と怪しく笑う神様を一瞥して、秋穂は不機嫌そうな顔をした。
『……他には思いつかないので、もういいです』
「あれ、容姿変更とか、頭脳明細とかいいの?頼まなくて。言っとくけど君、そこまで美人でも、頭よさそうでもないよ」
『知ってます!というか、わざわざ言わないでください!!』
ムッとして秋穂が言い返すと、神様はケラケラと笑った。
「別にそれじゃなくても、運動神経を良くしてほしいってのもできるよ?あと、トリップした彼女たちの心が読めるようにしたいとか」
『運動はあまり好きじゃないのでいいです。私はインドアを貫きます。……その子たちの心は、読みたくもありません』
「ふーん……。キャラとの関係を持たせてほしい、とかは?」
『いいです、別に。私は向こうで平和に平凡に人生を暮らすんです。むしろ今まで通り暮すんです』
不貞腐れたような口調の秋穂に苦笑して、神様は「わかった」と言った。
ふと、秋穂は思い出したような顔をして、神様へと向き直った。
『……トリップした子の名前とか、色々教えてください。2つ目のお願い、それでいいです』
「……へぇ。やっぱ、興味ある?自分を売った奴らだもんねぇ憎いよねぇ。復讐とかしちゃう?」
『……神様って、性格が果てしなく歪んでますね。最悪です』
初めは恐怖の対象だった神様に段々慣れてきたのか、秋穂の物言いもぞんざいになってきた。
『なるべく、関わりたくないんです。神様に情報リークしてもらって、その子たちに似たような子には近寄らないようにします』
「あー……なぁんだ、つまんないの」
別にいいけどね、と言いながら面倒臭そうに彼女たちのことを話す神様は、とても神様には見えない。
「1人目、清川 姫乃。特典、「顔を可愛く」、「逆ハー設定」。
2人目、天田 優愛。特典、「髪を銀髪」、「頭を良く」。
3人目、有野 流美。特典「中性的な美人に」、「生活の保障」。
はい、おしまい。それぞれ順に氷帝、立海、青学でキャラとの恋物語を夢見てるみたいだけどね」
はんっ、と小馬鹿にしたように笑う神様に、秋穂は『どうも』と言った。
『私の願いは以上です。容姿も脳みそも変えなくて構いません。生活は、転生した先で面倒見てもらいますからいいです。逆ハーは勘弁して下さい』
早口で捲し立てる秋穂に神様は適当に返事を返した。
「それじゃあ、向こうにいってもらうから。
―――おやすみ、秋穂―――……」
その言葉を最後に、秋穂の意識はシャットアウトした―――……。
さよなら、私の世界