ひまつぶし
□生贄の涙
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「やぁ、おめでとう!なーんて厭味にしかならないから厭味として受け取ってくれて構わないよ」
秋穂は、困惑した顔で目の前の男を見つめた。
少しくらい食ってかかりにくるかな、なんて考えていた神様は、小首を傾げた。
「君は、アレだね。少し頭が幼いのかな?」
神様はそう言って、笑顔で自分の頭をトントン、と指差した。
どうやらバカにされたらしい。それが分かった秋穂は、ムッとした顔で神様を睨んだ。
その表情に神様はやっと満足そうに頷き、「それじゃあ本題に入ろうか!」と明るい口調で言った。
「まず、まぁ君がどうしてここに来たかの説明からかな。まぁぶっちゃけて言うと、君、生贄なんだよね」
『いけ……っ!?』
あまり穏やかでないその単語に、秋穂はギョッとした。
神様はいっそ楽しそうに秋穂を見て、軽い口調で頷いた。
「そう、イケニエ。人柱。わかる?」
『わ、…わかりますけど……、わ、わたし、なんの生贄、なんですか?』
秋穂がおどおどとそう尋ねると、神様は綺麗な口元を醜く歪めて言った。
「―――ある少女たちが、異世界にトリップするための、だよ」
『トリップ……?』
「そう」
聞きなれない単語に、秋穂は混乱したような顔をした。
神様はそんな秋穂をケラケラと笑った。
『ト、トリップって、よく小説やマンガである、あれですか?別の世界へ主人公がいく……』
「そうそう。まぁこの場合、その「別世界」っていうのが、「テニスの王子様」っていうマンガの世界なわけ」
知ってる?と聞いてくる神様に、秋穂は小さく頷いた。
『友達に貸してもらって、読んだことが1度……』
秋穂の言葉に、神様は笑顔で頷いた。
「彼女たち―――あぁ、そのトリップした子たちね―――テニスの王子様のキャラクターと恋愛したいらしくてさぁ。で、僕仮にも神様だから、トリップくらい簡単にできちゃうんだけど、」
神様はそこで一旦言葉を切り、すぅっと秋穂を見つめた。
「そのためには、生贄が必要だったんだ。トリップさせるって、結構大変なことなんだよ。人1人その世界から消しちゃうわけだからね。―――そこで生贄として選ばれたのが、君なわけ」
『………、』
目を大きく見開く秋穂に、神様はくすくすと笑った。
冷たい笑いだった。
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