となりの席の

□あいさつと赤外線
1ページ/1ページ



「こんにちは」


「こ、こんにちは…? えっと、岸谷くんだよね 同じクラスのさ


どうしたの今更」


いきなりの事に千歳でも引き気味だった。


「こいつがどうしてもお前と話しがしてぇって」


「岸谷くんと話ししたことあるよ?前に授業で隣になった時にセルティさんの話しを…


した、というか聞いてただけな感じだけど」


「いやぁ、今は静雄に許可とってからの方がいいかなぁってああああああああ痛い痛い痛いよ静雄!!」


新羅は静雄にアイアンクローをくらわせた。


「…何で許可?」


「気にすんな」


「岸谷くん頭押えて倒れたまま動かないけど…」


「気にすんな」


「…わかった」



千歳は何故か少し赤い静雄を見て不思議に思ったが、これ以上突っ込むのは止めとこうと思った。


「あ!そうだそうだ」

「?」


思い出したように自分のポケットをごそごそと探り、出してきた物は携帯電話。


「番号交換しようよ!前から言おうと思ってたんだけど話ししてると忘れちゃってね」


「……」


「…あ、えと。嫌だった?」


「違ぇ。嫌じゃねーよ」


「ほんと?ありがと!」


静雄は一瞬固まっていたが千歳が不安そうな顔をするとすぐに携帯を取り出した。


「えーと…私のは…」


「? 赤外線使わねーの?」


「? せきがいせん??」


赤外線、という単語に頭に?マークを浮かべる千歳。


「……………赤外線、知らねぇのか」


「…ごめん、使った事ないよ。そんな機能あるの?」


「貸してみ」


「うん」


静雄が千歳の携帯をカチカチといじる。


「ここ、これ押して受信したり送信したりすんの」


「おおー!すごい!!最近の携帯は進んでるんだね!」


千歳に画面を見せながら操作すると感動したように声を上げ、パチパチと手を叩いた。


「年寄りみてぇな台詞だな」


「えっ!わ、私 静雄くんと同い年だもん!!失礼だよ!!」


「わりぃ」


プンプンと効果音が付きそうな怒り方をしている千歳を見て静雄はクックッと笑った。


「むぅ…やり方教えてもらったし許す…」



ぷうっと頬を膨らませ、唇を尖らせながら恥ずかしそうに言うその姿が小動物のようで、また笑いが漏れた。


「じゃあ送信するね」


「おー」


  ぴろりん♪


携帯を近づけると音が鳴った。


「こっちも送るな」


「うん!」


「… よし、送った」


「おおー来たー♪はじめて赤外線したよー!!」


覚えたてのことを楽しそうに実行する子供のような顔で笑う千歳。


「…僕のこと忘れてないかな」


「岸谷くんもアドレス交換しよう」


「え」


いつのまにか復活していた新羅にも携帯を向けた。


「だめ?」


「いや、ダメじゃないけどね」


静雄からあからさまに視線がささる。


「友達の友達はみな友達って言うし」


「昔のテレフォンショッキングに出演したゲストみたいだね」


「つーか新羅とは友達っつうより腐れ縁だ」


「じゃあ付き合い長いんだねー いいなぁそういうの」


ほわほわと笑いながら会話をするがその回答はどこかズレている。


「じゃあせっかくだし 交換しようか」


「よろしくねー岸谷くん」


「新羅でいいよ、 静雄の事とかよろしくね」


「? 何故に静雄くん?」


「静雄は千歳ちゃんが絡んだりすると結構おとなしくな痛ッ!!いたたたたたた痛い痛い!!痛いよ静雄!!」


「う る せ え!!」


「楽しそうだねー」


静雄が新羅の頭を掴みミシミシと音を立ててもがく光景を見て、遊んでいると勘違いした千歳は微笑ましく見守っていた。


 ぴろりんっ♪


そうこうしている内に交換が完了した。


「おおー凄い!池袋に来て初めて赤外線使った!!しかもアドレス帳に一気に2人も増えた!!」


「よかったな」


「うん!ありがと静雄くん!!あらためて、よろしくお願いします!!」


「おう…よろしくな」


嬉しそうにはにかむ千歳を見て、静雄の顔がほんの少し赤くなった。


「新羅くんもよろしくね!」


「よろしく」






千歳はその後もしばらくアドレス帳と静雄達を交互に見て嬉しそうにしていた。




あいさつと赤外線
(今度セルティに千歳ちゃんを会わせてみたいなぁ)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ