となりの席の
□変わる変わるイメージ
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「(可愛い…)」
男の人を見てそう思うのは変だろうか…。
でも隣の席で堂々と居眠りをしている金髪の平和島静雄くんを見ているとどうしてもそう思ってしまう。
あまりにも気持ち良さげに寝てて羨ましい。
「(まつげながー…)」
隣だからといってこんなにまじまじと平和島くんを見ているのは私くらいじゃないかと思う。
まぁなんというか力の強すぎる平和島くんは皆から恐れられているようで、皆関わろうとしない…。
「(こんなに可愛いのに…損すぎるよね!)」
自分も平和島くんの力を実際に見た時は驚きはしたものの怖くはなかった。
「おお、凄い。喧嘩強いだろうね、力仕事が得意そうだ。」と思うだけで終わってしまった。
けれどその考えは自分が一般的な脳みそを持っていたら、
平和島くんとまったく関わりがなかったら、怖いと思ったかもしれない。
あの日に道に迷ったりしなければ…怖いと思ってしまったかもしれない…と思うと早起きしてよかったと心から思う。
これこそ得である。
「平和島くん平和島くん」
「あ?」
肩をゆさゆさと揺すって起こすと寝起きだからかちょっと不機嫌な返事が返ってきた。
周りからいろんな視線を感じるけど私は気にしたりなんかしません強い子です。
たぶん。
「授業、次は移動だよー」
「……」
平和島くんと視線が合ったので揺するのを止めて小声で起こすと平和島くんは大きく伸びをした。
「あー…その」
「はいはい?」
まだちょっと眠そうな平和島くんが何か言おうとしていたのでそのまま首を傾げた。
「ありがとな」
「どいたしまして!」
そんなやり取りが面白くて笑いながら返事をすると平和島くんに驚いたような顔をされた。
いや、なんで驚くのさ…。
「…怖くないのか?」
「平和島くんが?」
「………」
黙ってしまわれた。多分不安なのかもしれない。
「怖くないと思うよ?」
誰かに気に入らない事をされなければ大人しくて 重い物を持ち上げた後とか、喧嘩した後とか
ただの荒くれ者の顔じゃないことを私は知っている。
誰かに怖がられたり避けれたりして、ちょっとだけ悲しそうな顔をしているのも知っている。
そしてなによりも、あの日、平和島くんが笑って、迷った私に一緒に行こうと言ってくれた。
あの笑顔を見た私は平和島くんを怖いなんて感じられなかった。
「私は怖いって思ってないよ」
「…そうか」
笑顔で思った事を言うと平和島くんはちょっと嬉しそうな泣きそうな顔をした。
そんな平和島くんを見てなんだか平和島くんの頭をよしよしと撫でたくなる衝動に駆られた。
彼に耳やしっぽが付いていたら間違いなくやってしまっていただろう。
「教室、一緒に行こ!」
「おう」
平和島くんはさっきよりも嬉しそうな顔をして返事をしてくれた。
変わる変わるイメージ
(あ、平和島くん)
(何だよ)
(名前で呼んでもいい?静雄くんって)
(じゃあ、俺も呼んでいいか)
(いいよ!もちろん)
(千歳)
(静雄くん)
((…何か恥ずかしい…))