小さな物語

□伏せた想い
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運動部の元気な掛け声と共に部室に入ってくる日差し。
その日差しに眩しいとばかりに目を細め机に伏す。
ひんやりと伝わってくる机の冷たさとは反して自分の中の思いが、熱くなっていく
いつからこんな気持ちを抱くようになったのかわからない…。
初めて会ったとき?
初めて遊んだとき?
君と約束したとき?
いつだったかなんて、覚えてない。
いや、気づいてないふりを続けていたのかも知れない
自分の頭をフル活動させて考えていると、ドアが小さな音を立てて開いた。

「今日は早かったんだな、律」
「まぁな…」

机に伏せたまま、今来た想い人に言葉を返す。

「みんなは?」
「唯は呼び出し、ムギは日直で、梓は掃除当番で遅れるって」
「そっか…」

そういい澪はいつもは唯が座っている席、つまり私の隣の椅子に腰掛けた。
そして、しばしの沈黙…。別にこの沈黙が嫌なわけじゃない、むしろ今の私にはこの沈黙が必要なくらい、胸が熱くドキドキしていた。
[澪が隣に座っている]ただそれだけなのに内に秘めた想いが溢れそうだった。いや、もう限界だった。ずっと抱えていた気持ちを伝えるには今しかないと心に言い聞かせ、私は澪に想いを伝える事にした。

「みんな遅いな」
「そうだな」
「…」
「なぁ澪」
「ん?」

私は伏せていた体を起こし澪と向き合う。
澪は私の行動に驚き、少し恥ずかしそうにしながらも、私の目に目を合わす

「あのさ…」

これから言う言葉は決まっているのに、なかなか口から出ない二文字。

「何?律…」

私を急かすような澪の言葉…。

「あ…えっと…」
「…」
「その…」

ジッと私の言葉を待つ澪の目が 私の胸にささる。

「私…澪の事が…、その…す…「やほー!待たせたね、りっちゃん!!」」

あと一文字を言おうとした時に勢いよく開かれたドアの前に唯、梓、ムギが立っていた。

「あれ?なんか私まずい事しちゃった?」
「いや、全然。あっそれよりムギ今日のおやつはなんだ?」

突然の来客に戸惑っていた私と澪に唯が不安な声をあげる
その声に現実に引き戻された私は慌てて話を逸らす。
ムギがお茶の準備を始めると、みんなそれぞれの席につく
唯の席に座っていた澪も自分がいつも座っている席に戻る
その際私の耳元で澪が囁いた言葉に私は気恥ずかしくなって机に伏せた。

「りっちゃんどうしたの?顔赤いよ?」
「うるせー。」

さっきの澪の言葉が頭の中で、ぐるぐる回っている。

『私も好きだぞ。律』

来た時は眩しかった日差しは今は柔らかなものに姿を変えていた。
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